投稿日:2014年10月19日|カテゴリ:院長コラム

 イングランドジャーナルに載った論文によると、妊婦94万9504人を対象として、妊娠初期の抗うつ薬使用者と産児の先天的心疾患の関連を調べた研究で、結果として、抗うつ薬による大幅なリスク増加は無いと云う結論が出ました。同様の研究は今までも何度も行われており、妊婦に抗うつ薬を投与してもおおよそ問題ないと云う結論が出ています。しかし、薬の説明書によると”薬を投与し続けることが、催奇形などの不利益を下回る場合は投与を続けて下さい”と書いて有ります。これを読んでしまうと、何を基準に判断したらいいのかが分からなくなってしまいます。中には、新生児に心血管の異常が増えた、肺動脈高血圧が増えたなどと云う論文も有り、困ってしまいます。でも実際の所は通常の出産数、10000人中、自然に奇形児が生まれる数が5人だとして、8人生まれたから増えたと云う議論で、妥当性が有るのかを疑ってしまいます。なお、イングランドジャーナル誌が妊娠初期と言っているのは、妊娠2ヶ月に胎児の臓器が形成し始めるので、2~4ヶ月が一番大事で有るからです。では5ヶ月以降なら何でもないのかと言えば、今度は胎児毒性が問題になる時期で、胎児の臓器障害、羊水の減少などが問題になって来る時期です(薬による障害だけではなく)。
 私は、今まで、同意を得た妊婦には抗うつ剤を投与し続け、健康な新生児を世に送り出しています、この27年間。特にパキシルの場合、うつ病のみならず、パニック障害、社会不安障害、PTSD,強迫性障害など、適応範囲が広く、治療を中断せずに成功しています。私は、胎児の催奇形性や胎児毒性の最大の原因はウイルス感染であると説明していますので、一般風邪を含め、インフルエンザなども含め、ウイルスに注意するように警告しています。
 今までの文章を読んでいると、私の妊婦等に対する治療がうまく進行している様に思えるでしょう。でも、でも、実は薬嫌いの人、薬恐怖の人の多い事、多い事。その様な方々には全く上記の様な説明は通用しません。隣の家のおばさんの話の方が通ってしまうのです。薬を継続できる人は元々、薬恐怖ではないのです。薬恐怖の人は授乳でも薬を嫌がります。でも、症状が何か有るから来院して、私の処方を持っていくのですね、しかし2度と来院されません。以前、そういう方がいらっしゃいました。その方は、とくだ薬局の木下氏からも十分な説明を受けてもいます。パキシルは母体の服用量のわずか0.02%ぐらいしか乳児に移行しません。その程度でも怖がっているのです。煙草の煙や排気ガスを吸う方がよっぽど体に悪いはずなのにです。元々、何故当院に来院し、説明を受け、処方箋を受け取って帰られたのでしょうか?意味不明です。
 しかし私は自分の考えを押し付けることはしません。患者さんの希望に合わせています。薬を止めたい人には止める様に持って行き、漢方に替えたい人には漢方を処方しています。私は自分の考えをゴリ押しするタイプの人間ではないので、そこのところはご安心下さい。