投稿日:2014年6月29日|カテゴリ:院長コラム

 2~3年前の事でしたか、ある論文を目にして仰天しました。ケタミンと云う薬、これは麻酔薬なのですが、10日間程度うつ病患者に投与したところ、あっという間に9割近くの患者のうつが改善してしまった。と云う内容なのです。それでは私もケタミンを使ってみようと思い麻酔科専門医に聞いたりしましたが、結局麻酔薬なので今二の足を踏んでいます。このケタミンの効果は脳内にBDNFと云う物質を増加させるところに抗うつ効果が認められます。当時は研究者以外にはケタミンは注目されておらず、学会のテーマにもなっていませんでした。まだ無視されていたのですね。
 さて、多くのうつ病の専門医が居る訳ですが、この医師たちが、おおよそ20~30%近くの、どうやっても治らない「うつ病」、「非定型うつ病」、「躁うつ病」患者さんをかかえて大変悩んでいます。この患者さん達、他医に転医させても改善しないことは目に見えています。私の所でも、なかなか改善してこない患者さんから、転医を申しだされ、紹介状を何通か書きましたが、転医先で改善した話は入っていません。それはそうです、既に当院で知恵を絞って対処していたのに治って来ないのですから、いくら他の専門医を訪ねても改善する確率は低いのです。もう薬はほぼ使い果たしているのです。また、紹介先の精神科から当院に戻った方もいらっしゃいます。この現象、仕方ないのです。セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンの論理(モノアミン)だけではダメなのです。つまり、医師に武器がないのです。
 さてBDNF(脳由来神経因子)ですが、神経の栄養不足説を支持するものです。この物質、神経細胞の核から産生される液状因子です。脳内に広く分布していますが、脳を超えて全身を巡っています。ですから採血でBDNFが多い、少ない、を判断できるのです。つまり、うつ病者では少なく、正常者では多いのです。では、すぐに調べられるではないか、と思われがちですが、特殊な研究機関でしか検査は行っていないので、普通の意味の採血検査で分るものではありません、残念。また、脳内の液状因子がどうして身体にまわってくるのかはよくわかっていません。
 ストレスをスタートとしてみると視床下部ー下垂体ー副腎系の機能亢進が起こり、グルココルチコイド(ステロイド)が上昇、これが脳を損傷させ、BDNFが減少して、その結果うつ病が発症するとも言えます。
 BDNFの薬剤が早くできれば良いですね。うつ病の人には福音です。でも、その前に治療で悩んでいる専門医たちが飲んでしまうのではないでしょうか、私ならかじります(笑)。