投稿日:2014年2月26日|カテゴリ:院長コラム

 今回も都内の某病院での話です。なにしろ、日本医大は沢山の関連病院を持っているもので、話題に事欠きません。ここで、少し自慢話をしますので、不快に思わないでください。日本医科大学は私学としての医大として、130年を誇る、日本最古の私立医科大学です。戦前の大学令で大学として承認されたのは日医、慈恵、慶応のわずか3校にすぎません。そのため、一般には私立御三家と呼ばれています。順天堂大も古いのですが、御三家には入っていません、何故でしょう?。中学校の御三家は?開成、麻布、私立武蔵ですよね、正解。
 さて、私はH病院の当直を毎週命じられていました。当然救急車が入ってきます。有る時、50代ぐらいの男性が運ばれて来ました。痛み刺激に全く反応しません、完全昏睡です。これはヤバイ症例ですね。血管確保、尿路確保、挿管で気道確保と対応し、当時はまだCTが導入されていなかったので、腰椎穿刺を行い、血清髄液が確認されたため、脳出血、あるいはくも膜下出血と判断し、治療を始めました。患者さんは鼾の様な大きい呼吸をまじえながらも微動だにしません。この患者さんには付き添いの方、奥様?がおられましたが、家族を呼んで説明をするタイミングを計っていました。救急病棟には緊張感がズーットただよっています。この患者さん、回復する事は無さそうです。そこで、おもむろに腰を上げ、家族全員を病院に集めるように付き添いの方に指示を出しました。真夜中になって、ゾロゾロと家族が集まって来たため、まず患者さんの所に連れて行き病状を見てもらい、それからナースステーションに全員を呼んで、詳しい病態の説明に入りました。「まず、脳出血と思われます。時間がたてば脳が腫脹して、脊椎管の中に押し出されるので、呼吸、心臓も止まり、そのまま亡くなる可能性が有る事を覚悟して下さい」。と説明しました。説明が終わり、他の患者さんの回診を始め、元の病棟に戻ってきた時、おおよそ、説明から10~15分後ぐらいです。・・・ドヒャー(古いギャグ)!!、ビエーッ!!、・・・・・・・例の患者さんが、布団から起き上がり、挿管を自らはずし、家族達とニコニコ歓談しているではありませんか!!?、・・・呆然、・・・”いったい私の立場はどうなるの?”、でも家族には嬉しい事ですが。重い気持ちで患者さんの所へ行き、所見を取ると、麻痺はなく、意識清明で、普通のおっさんです。しかし、昏睡で搬送されて来た重い事実は変えられません、ここはもう少し長く様子を見て行かねばならないことを説明し、治療を続けました。そして、やっと朝が来ました。常勤医と引き継ぎ、逃げるように大学に戻ってきました。
 しかし、どうしてこの様な事になってしまったのだろうと考えたところ、患者さんはくも膜下出血を起こし、昏睡状態となり、途中で意識が戻ったのだろう、と考えました。くも膜下出血を起こすと、出血で出た血液成分の中に、血管攣縮因子があり、この場合い初期に、脳の主要血管が攣縮を起こし、意識が失われたのだと考えました。一般には、脳血管攣縮は、発作後、1週間ぐらいです。でもこの様に考えないと説明がつきません。皆さん、医者も大変なんですよ。