投稿日:2013年1月19日|カテゴリ:院長コラム

 大学病院の病理医の仕事は病理標本の診断と病理解剖です。これらの他に余裕が有れば、研究と云う事になります。病理医として、長く仕事をして行き、経験を積んで来ると、非常に強いストレスを味わう仕事が登場して来ます。それは迅速診断です。これはゲフリールと呼ばれ、これを行う朝から嫌な気分です。どのような事かと言うと、手術場で、例えば乳腺の一部を切り出して、それをすぐに病理部に持ってくるのです。病理部ではその組織を凍結させて、顕微鏡検査に耐えうる標本を迅速に作り、私の前に持って来ます。私はその標本を見て悪性か、良性かを判断して手術室に結果を電話で伝えます。結果が出るまで手術は中断されたままです。悪性なら悪性の手術をし、良性なら手術をせずに終わらせます。さて、私が良性と悪性との判断を間違えたらどうなるでしょう、患者さんにとって恐ろしい結果がもたらされるのです。これ程手に汗握るプレッシャーを感じる場面は有りません。乳腺は判断が結構難しい臓器です。脳腫瘍の診断もやたら難しいです。肺がんの切除断端に悪性細胞が残って居るか否かの判断も嫌です。要するに嫌ではないゲフリールなど、存在しないのです。病理専門医の時代は今は昔ですが、相当アドレナリンが出ていたと思います。